辻専務、山上、辻武志、久保田インタビュー

— 東京営業所の皆さんにお話を伺います。まず、東京営業所の役割について教えていただけますか。

専務)
輸出と製品企画をやっています。東京に営業所を構えたのは40年ほど前になりますが、当時は生地の商社さんが結構あって、それなりに量が売れたんです。ただ、次第に海外製の安い製品が多くなっていくなかで、東京営業所の立ち位置を考え直す必要が出てきました。模索を続ける中で、まず見出したのが輸出です。バランサーキュラーという商品を一番最初に見に来たエージェントの方が、海外輸出をしていますかと聞くんですね。まだです、と答えたら、僕に1年貸してくださいと。いいですよと答えて、ほんの15分くらいの商談で海外進出を目指すことになりました。当時はユーロ高で値段設定はきつかったんですが、ピンポイントで攻めましょうという彼の方針で2~3社に絞ってあたりました。商談が決まったときは、思わずガッツポーズしましたね。そこから順調にのびて、いまでは輸出がひとつの柱になっています。もうひとつは、自社製品。実は過去に自社生地を使っての製品で失敗したことがあったので、製品というのに結構アレルギーを持っていたんです。でも、いろんな人とお会いしたり、ネットの普及を目の当たりにしたり、アパレル会社さんに生地を売ったあとでうまくいかなかったりして、いっそじぶんたちでやらんかという話になりました。
突き合わせの特殊な縫製との出会いも大きかったですね。特許をもっている方が、バランサーキュラーをみて、自分のところの縫製とドンピシャの生地だというんですよ。縦・横・斜めと、どこからでもほつれにくいんです。バランサーキュラーとこの特殊な縫製を組み合わせて、日本製というブランドで売っていこうと。海外の取引先からも、生地ではなくて、日本ならではの良質な完成品を作って欲しいといわれています。

— 特殊縫製のステッチシーマは、縫い代がないことが特徴ですね、どんなメリットがありますか。

専務)
軽さですね。カーブしている箇所なんかは縫製が特に難しいのですが、仕上がりがとにかく軽いんです。

山上)
軽さに加えて、縫い代が肌に当たるというストレスがないのもメリットですね。すっと着られて綺麗に見えるのは、今のカジュアルなトレンドにも合っていると思います。バランサーキュラーとステッチシーマの相性が非常に良かったんですね。縫い代がないぶん、スマートフォン1台分軽くなるんですよ。そういう軽さというのは商品を着たときによくわかります。見た目に厚みがあるときでも、着てみたら軽いんですよね。

専務)
ギャップがあるよね。

山上)
質感も求めるお客さんもいらっしゃいますが、厚ければ厚いほどきれいなシャープさが出て、ラインもきれいです。

— 縫製時にカーブの部分が難しいというのは、たとえば肩の部分にいせができないことなどでしょうか。

専務)
そうです。だから裁断がすべてです。綺麗に裁断してないと、縫い代がないからごまかしがきかない。そこが難しいですね。

山上)
あとは職人さんの技術も当然ありますね。慣れている人であればやっぱりすっきりと綺麗に仕上がるので。他にもいろんなバランスが組めると思います。ここは普通縫製にしようとか、袖裏つけようとかね。いまのスタイリングからすると、シャツだけじゃなくて、Tシャツやセーターも多いので、そういうのだとゴロツキ感がない方がやっぱりスマートになるとか。

— 生地が厚いものから薄いのまで対応できるとなると、表現の幅がありますね。

専務)
バランサーキュラーのポイントをいつも2点挙げるのですが、ひとつは着心地の良さです。ふたつめは、カットフリーというビジュアル。裁断するだけで、針や糸を使わなくても完成品ができてしまいます。

— 着物が直線的であることを考えれば、とても日本らしいですね。

専務)
バランサーキュラーで着物を作ったこともありますよ。デニム着物など変わったものにも取り組む和装屋さんだったので、前も色違いで2枚にして、ちょっとカットすると下の色が見えるとか。何枚も重なっている裾は断ち切りにしたりして。コートみたいなのも、作りましたね。兵児帯もやったし。

山上)
ストールとか、あとは冗談半分で蝶ネクタイとかね。

専務)
ネクタイって何であの形しかないのか、もっといろんなスタイルがあってもいいと思ったんですよ。それでバランサーキュラーでひょうたんみたいなネクタイを作ってみました。ま、なかなか受け入れられませんでしたけどね。でもそういう遊びも将来的には、力をいれてみても面白いんじゃないかと思います。例えば長繊維なんかは伝線しますが、バランサーキュラーははほとんどしないですからね。バランサーキュラーの編み機というのは、トリコットと丸編みをドッキングさせているんです。一番最後に編み込む時に同じ位置で入ってしまうとほつれて伝線するのですが、ひとつずつずれているので、ほどけないんですよ。

— バランサーキュラーは、中古の機械を改造したことがスタートでしたね。

専務)
いろんなことができる機械と聞いていたのに、最初は使い勝手が悪かったんです。それを、社長のインスピレーションで改造に取り掛かりました。ちょうどその時期、会社が非常に悪かったんですが、費用のことはあまり考えていませんでした。1台目にはかなり費用がかかりましたね。1台目ができるまで、1年半ほどかかったかな。でもできあがってきたら、頭のなかに商品のアイデアが一気にふくらんだんですよ。それをサンプルでもいいから全部作ってしまおうと、一気に60点くらい作りました。そのなかで、ウールが一番相性が良かったのでスタートしました。

— これからオリジナル製品として、どんなものを作っていきたいですか。

山上)
僕が丸和ニットに来たのは、ファクトリーブランドをつくりたいと思ったからです。いままでバランサーキュラーで色々と製品を作ってきていて、その良さは分かっていたので。オリジナルで作るのがベストじゃないですか。僕はもともとは丸和ニットのお客さんで、25~6年付き合いがありました。和歌山に行けば、丸和ニットといえばかなり大きな会社で、生地はだいぶ取引させていただきました。ファストファッションの流行で、いろんな生産が海外に全部流れて、僕もしょっちゅう中国に出張しました。でも、ものづくりがいいかげんだったり、日本の繊細な部分を共有するのも民族性の違いでなかなか難しかったりしました。そういうときに武志くんと出会って、専務とも話をして、じゃあ一緒にやっていこうということになりました。

東京の事務所の役割を考えたとき、お客さんと市場が近いことは大きいですね。原宿も近いし。それを生かさないといけません。そのためには、生地をハンガーにかけて置いておいても良さは伝わらないので、製品で見せていくことが大事だと思います。バランサーキュラーの場合は、製品を着て初めてわかる良さがあります。軽さや程よいテンション、ひじやひざの出にくさは、今のスタイルにも合っていて、きちっとした格好でも動きやすい。デザインも含めて、まずはそうした良さを知ってもらいたいです。いずれは並んで買ってもらえるくらいになるのが夢ですね。

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— バランサーキュラーについてもう少しお聞きしたいのですが、強度がありながらも、表情はすごくきれいですね。緻密な計算と、経験と、開発によってできあがった生地という感じがします。

専務) バランサーキュラーの良さは、お客さんに教えてもらった部分もあります。購入してくれた方に「なぜこの生地を選んだのか」と聞くと、「とにかく軽い。動きやすい。ひじもでにくいし。型崩れもしにくい」という言葉が返ってきます。これは画期的な生地ですよと、お客さんに言われたくらいです。

— BEBRAINというブランドが出来上がった経緯について教えてください。

専務)
名前自体はかなり前に取得しました。名前の由来は、もっと頭と知恵を使おうということです。自社の生地を使うという軸はぶらさずに、今までにはない、新しいアイデアを製品化していきたいと考えています。

— 武志さんにお伺いします。BEBRAINをどのように展開していきたいですか。

辻武志)
サテライトショップなどを通じて、全国にネットワークを広げていきたいと思っています。現地の人脈や土地柄を知ることも、今後の製品開発につながると期待しています。「これがやりたい」という熱を大切にして、世界の前にまず日本で、BEBRAINを広く届けていきたいですね。

— 続いて、東京事業所の紅一点、久保田さんにお話を伺いたいのですが、まずご担当を教えていただけますか?

久保田)
営業サポートです。

— 丸和ニットに入社されたきっかけは?

久保田)
事務関連で就職先を探していたときに、好きな洋服に関わる仕事がしたいなと思っていて、丸和ニットにたどり着きました。

— 生地屋さんはある意味で特殊な業種だと思いますが、戸惑いはありませんでしたか。

久保田)
特にありませんでしたね。

— バランサーキュラーという生地を初めて見たときはどうでしたか。

久保田)
生地から洋服ができあがってきたときは感動しました。

— 今後、東京営業所がショールームとしての機能も担っていくにあたり、久保田さんも接客すると思うんですが、なにか意気込みはありますか。さらに情報を発信するというところでは、久保田さんがリードするところがあると思いますが。

久保田)
そうですね!SNSやサイトの更新など積極的に丸和ニットの魅力を発信していこうと思っています。