ファストファッションの台頭による危機感

— 丸和ニットのこれまでの経緯を簡単に教えてください

昭和9年創業、法人設立が昭和26年です。もともとは肌着でスタートして、メリヤスの生産をしていました。あとは、いま一部で人気のある裏毛。このあたりがスタートですね。裏毛の機械というのは希少価値があって、人気があるんです。昭和30年の前半に旭化成や東レ、帝人が合繊化繊を開発し、それに乗じてアウターに転化していったんです。

一番の会社の転機になったのは、旭化成のカシミロンとベンベルグの混紡糸。この素材をうちの独占で扱わせてもらって、当時は売り上げが5倍6倍になりましたね。それが一番の初期の頃の大きな事柄ですね。さらにワンポイントのブームもあって。ご存知ですか?

— ワンポイントというのは?

マンシングウェアとかアーノルドパーマーとかのワインポイントマークです。それをつけて売り出しました。今では考えられないほどの数量で販売しましたね。当初は肌着とアウターと分かれていたんですけども、肌着はだんだん消えていって、アウター主流になって、そのあと本格的にアクリルとウール、ポリエステルが主体になりましたね。

— いまは素材(生地)の生産だけに特化されていますね。

そうです。同じビジネスモデルで好調な時期が30年とか35年とか続いたんですよ。そのあとの変調の兆しは、ファストファッションの台頭です。彼らが中国で一貫で作ると、コストが全然違うわけですよ。これが今後主軸になってくるだろうと思っていたら、業績も下降線になりました。で、これではあかんなと。当時の商品群は量販店向けだったので。でもこれという手が打てないんですよ。そんななかで会社が変革できる一番の転機になったのは、バランサーキュラーという機械ですね。あれを見出して改造して、今は世界でうちにしかありません。

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バランサーキュラーとの出会いは偶然

— 丸和ニットといえばバランサーキュラーですが、開発のきっかけを教えてください。

偶然というか巡り合わせなんですよ。ちょうど2000年に、不織布の機械を見に愛知県に行ったんです。案内してくれた方が、「辻さん、北陸にちょっと面白い機械があるんだけど見に行かないか」と。「どういう機械?」と聞いたら、「特許切れてるんだけど、ちょっと面白い構造なんだ」。「連れてって」と、その翌週に福井に行ったんですよ。そこで見た中古の機械は、1976年に特許申請して20年間作っていたんですけども、1996年に特許が切れて。縦糸が全コースに入る装置で組み立てられるという機械でね。部分的に縦糸が入る機械はあったんですけど、全コースに入る機械はなかったんです。これは面白いなと思ったんですけど、編んでいる生地はとても汚くて使えないんですわ。でも機械の構造は面白いということで、中古を、1台ずつ2回に分けて、2台買いまして。で、その欠点をカバーするべく改造したんです。それが2001年、2002年に形になりまして。うちの専務に、機械見て帰ってくるなり、こういう機械があると話したら、専務はああいう性分やからね、やろやろ、それ作ろう、と。

うちの技術者に改造させて、専務が商品開発して、営業のものが営業販売に行って。でも当初はなかなかお客さんがつかなかったんですよ。それが4~5年してから、某大手アパレルのレディース用向け用途が決まりました。選ばれた理由を聞くと、とにかく軽くて動きやすく、型崩れしにくいと。その後、瀧定(現スタイレム)が面白いと目をつけてくれたんですが、彼らの注文はすごいボリュームだから、機械が足らん、もっと台数増やさないとあかんと。ということで、そこからは機械メーカーとの折衝も始まりました。

日本で一番有名な丸編み機メーカーで話をしたんですけども、向こうは全然話に乗ってこなかったんです。プライドがあるからね。よそで作った機械をなんでうちで作らないとあかんねんと。それで2回断られて、得意先に事情を話したんだけども、すでにできている機械をなんでつくれないんやと。もっとなんとか真剣に考えてくれないかと。で、3回目でいっぺん話にのろうかということになって、うちの機械をそっくりコピーすることから始めたんです。彼らも一流メーカーとしてのプライドがあるから、新しい機能をつけようと簡単なジャガードとかを工夫して、なおかつ欠点は全部カバーしてくれました。5台発注したんだけど、3〜4年かかって完成しましたね。

— すごいプロジェクトですね。一番大変だったのはどんなところですか

工作メーカー機械で有名な会社があって、そこが昔は丸編み機を作っとったんですよ。当時は丸編み機の生産からは撤退しとったんですけども。たまたま福井へ機材を見に行った時に、私の知り合いでそのメーカーにいた人が一緒に作ってくれたんです。その場で、これは欠点があるから改造したいと話をしたら、うちやりますよと安請け合いして。それなのに、途中でこんな難しいものできないと言い出して。こっちからも技術者を出して直談判してなんとか1台作って、もう1台ということで2台作らせて。そのあたりが初期のしんどい時期やったかな。

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ほつれにくい、バランサーキュラーの生地

— バランサーキュラーの機械についてもう少し教えてください。

正直、効率は良くないです。扱いも難しくて、技術が要ります。うちは十数年キャリアがあるからだいぶスピードアップしてますが、他のメーカーに持っていってもなかなか扱えないと思いますよ。うちも機械を導入してから数字になるのに時間かかりました。スタッフの養成が必要ですね。

— 設備からメンテナンスから、すべてやられているのですね。

我々も丸編み機メーカーではなかったんですが、縦糸整経機を全部自社で設備しましてね。編み機の上に、ビームというのが4台載っているんです。そこから縦糸がおりてくるところに、従来の丸編の横糸があります。タテとヨコと両方の糸が入って、すべてループ組み込まれるんです。非常に編みにくいんですよ。

— すごいですね。バランサーキュラーの特徴として、切ったところがほつれないと聞きました。

「ほつれない」ではなく「ほつれにくい」です。専務によくいうんですが、断言したらあかんぞと(笑)

— 特許はとられたんですか

特許はとりません。過去の機械ですから。商標はとります。

— バランサーキュラーはまだまだ需要がありますね。

ありますね。ただ、なにせ高級品ですからね。いろんなブランドが手を上げてくれるけれども、実際どこまで続くかはまだ見極めています。

— 「Made in Japan」のものづくりブームが東京オリンピックに向けて加速していくと思いますが、それについてはどう思われますか

一番の好材料でしょうな。うちの商品は、世界中にうちだけにしかないから。

— 最後に、社員の方に向けてメッセージをお願いします

バランサーキュラーを導入して、社員の意識が変わりました。それまでは典型的な量産型だったのが、手作り感覚のものづくりをしていこうとなりました。そのために、個々人が意識を高く持って、いいものを作ろうと意識を高めないといけません。ああいう機械を扱っていると、だんだんそうなってきますけどね。